飛んでイスタンブール

Sceneken

2012年09月02日 23:50

飛んでイスタンブール
 飛んでイスタンブール、旅の終わりはイスタンブール。世界で一番魅力的な都市、アジア、ヨーロッパにまたがって、東西が交錯する。イスタンブールは、エキゾチックなモザイク模様で織り込まれている。歩いて行くだけで異郷と出くわすことができる。
 ローマ、ビザンチン、オスマントルコ、世界の歴史のど真ん中を走り抜け、交易は東西南北に及ぶ。世界の富の3分の2が集まると言われた。まさに世界の中心。人の行き交うところ美食あり、美女あり。スリもいる。
 去年、イスタンブールを案内してくれたアルタンさんと再会、満面の笑み。いざイスタンブール探訪へ、坂道を駆け下りる。
 どこをどう歩いても、小さな発見があり、ちょっと幸せな気分になる。街角を曲がれば、そこはすでに懐かしい場所が隠れている。道行く人は人懐っこく笑いかけてくる。トルコは親日家が多い。 

            ガラタ塔の建つ新市街
 トラムでガラタ橋のカラキョイ駅へ向かう。ここからヨーロッパ最古の地下鉄に乗りかえる。全長573m、高低差60メートルの勾配を2分ほどかけてゆっくり走る。ガラタ塔近くのテュネル駅まで世界最短の地下鉄、というより地下ケーブルカー。1875年に開業したロンドンに次ぐ古さを誇る。パリより早く開通し、ユーラシア大陸では初の地下鉄である。
 ガラタ塔は14世紀にジェノヴァ人によって建てられた。ジェノヴァは黒海からと地中海を結ぶ交易を一手に引き受けて栄えた。塔から新市街の赤い屋根が打ち続くのが見渡せる。イスティクラール通りにノスタルジックなトラムが走る。

        ガラタ塔から旧市街を望む。ガラタ橋、アヤ・ソフィアが見える
 ボスポラス海峡を豪華客船がいく。金角湾に架かるガラタ橋、丘に連なるアヤ・ソフィア、ブルーモスク、トプカプ宮殿、その向こうにマルマラ海。大パノラマに1500年の歴史が移ろう。空の青、海の青、イスタンブールは果てしなくトルコブルーに染まる。

      ハイダルパシャ駅、ドイツは3Bのビザンティウム、(Byzantium)
 塔を降りて、カラキョイ港まで歩いて行った。アジア側へフェリーでボスポラス海峡を渡る。大都市の真ん中を流れる海峡なのに透き通ってきれいだ。さわやかな風に吹かれて、波をかぶりながら船はマルマラ海に出た。
 船から憧れのウスキュダルが見える。江利チエミが唄った、世にも不思議な街ウスクダラ。カドゥキョイの港に着く。アジア的な混沌が街中にあふれている。路地から路地へ分け入って、魚介類の小店が並ぶ通りに出た。サバ、ヒラメ、アジ、どれも生きがいい。石畳の路地に面したロカンタ(大衆食堂)で、イカとエビの網焼きを食べた。いいなあ、道端の昼めし。
 ハイダルパシャ駅へ寄る。アジア側の駅、ここからバグダッド行きの列車が出ていた。19世紀末、ドイツは3B政策を取った。ベルリン(Berlin)・ビザンティウム、(Byzantiumイスタンブール).バグダード(Baghdad)を鉄道で結んだ。ハイダルパシャ駅こそByzantiumのBだったのだ。歴史の教科書に巡り合った。
 アガサ・クリスティーは何度も列車に乗ってバグダッドの旅に出た。そこで運命的に若き考古学者と出会う。恋に落ちて再婚。
 駅の構内には、恋が成就してめでたくゴールインしたカップルがベンチで仲良く座っていた。新郎新婦の晴れ姿に古風な駅舎が華やぐ。

           ハイダルパシャ駅構内の新婚さん
 カドゥキョイの港で帰りの船を待った。その間、カフェでコーヒーを飲んだ。コーヒーと言えば、世界最初にコーヒーハウスができたのがイスタンブール、1554年のことだった。サラエボで飲んだあのカフェは世界で3番目に古い。

              アルタンさんのコーヒー占い
 トルコ・コーヒーは、濃くて甘い。アルタンさんがコーヒー占いをしてくれた。カップにとろりと残ったコーヒーの模様を見ながら、フムフムなどという。お魚のような形が見えるでしょう。これはお金に困らないことを意味しています。へぇー。女難の心配はありませんか。ありません。
 船は再びボスポラス海峡を渡った。ナイチンゲールの活躍したセリミイェ兵舎が見える。

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