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東海・東南海・南海沖地震 考

“S.E.M. たより №349 (2011.05.11)”より
東海・東南海・南海沖地震 考

東海地方に住む我々にとって東日本大地震が発生して以来、強く意識するようになったのが近々
起きるであろう、と言われている東海沖地震である。 巷でも「東日本大地震に刺激されて東海・東
南海沖地震が早まった。数年内に起きる可能性大ではないか!」。 また「東日本大地震が起きた
からガス抜き(地震エネルギー放出)がされて東海沖地震は遠退いた。」等など さまざまな噂や憶
測が飛び交うようになった。 そして政府による、リスク回避のための浜岡原発の一時全面停止要
請がより東海沖地震への不安感を呼ぶ。 では実際はどうなのか? 出来得る範囲で地震発生の
可能性を調べてみることにした。
私の手元に興味深いレポートがある。 資料名は「歴史地震による浜名湖周辺の津波の被害と
模型実験による再現 その2」。高校時代地学部に在籍していた二女たちが調査研究してまとめ
たレポートである。これを読むと過去に起きた事実と、そこから読み取れる将来起きるであろう東海
沖地震の規模・発生時期が推測できる。

【科学の甲子園】
高校生球児憧れの舞台“甲子園”。 球児たちはこの頂点を目指して日頃の努力とその成果をぶつ
けあう。 同様に科学の分野でも研究成果を発表しその優秀さを競いあう“日本学生科学賞”と言う
審査会がある。 いわゆる“科学の甲子園”である。娘たちの研究成果はこの審査会で最高の賞で
ある「内閣総理大臣賞」を受賞している。 レポート内容は濃く その精度は極めて高いものと言える。
レポートから見えてくるものを記してみることにする。

【歴史に刻まれた東海・東南海・南海沖地震】
古文書、文献などで歴史に刻まれた規模M8以上の巨大地震の記録である。
 ○1364年8月3日 正平地震 M8.0-8.5
  被害の規模などの詳細は不明だが、古文書には地震が東南海を中心に広範囲にわたったこと
  が記されている。  (この地震以前の信憑性ある東海沖地震記録は残っていない。)
 ○1498年9月11日 明応地震 M8.2‐8.4
  津波による死者3-4万人。九州から東海にかけて地震被害の記録が残されている。
 ○1605年2月3日 慶長地震 M7.9-8.0
  地震動による被害は少なかったが太平洋岸で津波発生による死者1-2万人。
 ○1707年10月28日 宝永地震 M8.6
  死者2万人余、倒壊家屋6万戸余。土佐を中心に大津波が襲った。
 ○1854年12月23日 安政地震 M8,4
  死者は合計で5,000人以上、余震が9年間続く。
 ○1944年12月7日 昭和東南海地震 M7.9
  津波のため尾鷲が壊滅した。このほか、長野県諏訪盆地でも住家全壊12などの被害があった。
  津波が各地に来襲し、波高は熊野灘沿岸で6‐8m、遠州灘沿岸で1‐2m。
  紀伊半島東岸で40cm地盤が沈下した。最大波高は尾鷲市賀田地区で記録された9m。
  戦時中で報道管制下にあり記録が殆ど残っていないため地震被害の詳細は不明。
  ニューヨークタイムズはこの地震を、「地球が6時間にわたって揺れ、世界中の観測所が、「破壊
  的」と表現した」と報じている。

【東海・東南海沖地震発生時期の予測】
冒頭に記した「東日本大地震に刺激され東海・東南海沖地震が早まり数年内に起きる可能性大。」
「東日本大地震が起きガス抜き(地震エネルギー放出)がされて東海沖地震は遠退いた」、これらの
憶測は、両者の震源域のプレートが異なる(東日本:北米プレート、東海:フィリピン海プレート)ため
根拠が希薄である。

東海・東南海・南海沖地震 考
東日本大地震:太平洋プレートが北米プレート下に沈みこむ縁に地震の巣がある。
東南海沖地震:フィリピン海プレートがユーラシアプレート下に沈みこむ縁に地震の巣がある。

地質学者・地震学者など専門家の多くが指摘する予測時期(確率)は「30年以内に起きる可能性が
90%」である。 では、この根拠はどこにあるのか。
上記した過去の巨大地震発生記録を見ると・・・
 1364年 (134) 1498年 (107) 1605年 (102) 1707年 (147) 1854年 (90) 1944年
年号間のカッコの数字は 次の地震が発生するまでの年数である。記録が残る700年間の地震発生
サイクルは90~150年で平均すると110年である。 最後の地震発生年1944に110を足すと2054年と
なるが、最小値90を足すと2034年になる。 これにフィリピン海プレートの歪み速度などを考慮すると
“30年(2042年)以内に東海・東南海沖地震が起きる可能性は90%”と言うことになるのである。
地震科学においてピンポイントの精度を要求される地震発生予知科学はまだまだ未熟であるが、発
生メカニズムやアバウトな回答が出される地震発生時期予測科学はそこそこの精度で解明されるよ
うになって来ている。 その意味で専門家の予測説明は確固たる裏づけと明確な根拠がある。彼らの
警鐘はしっかりと受け止めるべきであろう。


レポートからもう一点、興味深い項目を記しておく。
舞阪における 安政東海地震による津波浸水地域調査
 文献などのデータ値を基に津波浸水標高を測定した結果 4.95mが計測された。これは古文書の
 記録とほぼ一致することが判明した。 古文書に「津波の難を逃れるため岐佐神社へ人々が登った」
 と記録されている。 測定値は舞阪地域で最も高い場所、(大太鼓の祭で有名な)岐佐神社の一部
 を残して全てが水没したことを裏付けている。 またこの時、リアス式海岸を有する三重県南部では
 津波浸水標高10~20mを記録している。
 今回の東日本大地震を遠州沖に置き換えると、津波到達最奥部は海岸から6km。 JR浜松駅周辺
 までが浸水することになる。 東海沖地震がかなりの規模で起きることは想定していたが、ここまで
 とは・・・

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