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中東紀行 ダマスカス

“S.E.M.旅行Gr №197 (06.08.26)”より
ダマスカス
中東紀行 ダマスカス
【旧市街】
ダマスカス(190万)の中心部は、高層ビルが立ち並び、シリアの首都だけのことはある。旧約聖書にも出てくるほど歴史は古く、町になって6000年は経っている。市制6000年とはすごい。8世紀、イスラム帝国の首都となる。その後、モンゴルやトルコの攻撃を受けて荒廃していったが、現在、過去の栄光を取り戻しつつある。
ダマスカスを見渡す絶好の展望の地は、カシオン山である。山裾から駆け上る新興住宅地に埋め尽くされようとしている。街の中心をバラダ川が流れている。川は砂漠の彼方まで流れ出て、河岸に緑の絨毯を縁取る。振り返るとアンチレバノン山脈、遠く雪をいただくヘルモン山が見える。
山の東側に切だった岩山が見える。旧約聖書に、カインが弟アベルを妬んで殺してしまう話がある。その殺害現場があの岩山だという。アブラハムはカナンへの旅の途中、この辺りにたどり着いているし、イエスとマリヤが逃げてきたのもダマスカスだし、洗礼者ヨハネもここに祀られている。限りなく旧約聖書の世界が広がる。
中東紀行 ダマスカス        
【落馬するパウロ】
ダマスカスのまっすぐな道。かつては列柱が並んでいた通りも、今では自動車道になっている。この通りをパウロは歩いていた。ユダヤ教であった彼は、キリスト教徒を迫害して回っていたのだ。すると天から光が降りてきて、パウロの目を射る。痛いと目を覆ったが、視界は閉ざされてしまう。パウロはイエスの声を聞く。「なぜにそなたは迫害するのか」。
近くに住むアナニアが、パウロの目に手を当てると、目からうろこが落ちた。視力を取り戻したパウロは、180度回心して、熱心なキリスト教徒となる。彼は地中海沿岸をくまなく伝導して回った。パウロなくして今日のキリストの隆盛はなかった。アナニア教会には、光に打たれたパウロの像があった。
中東紀行 ダマスカス
【ウマイア・モスク】
旧市街地は世界遺産になっている。古ぼけたアーチの路地を行くと、ウマイヤ・モスクが、突然現れてくる。715年に建てられた世界最初のモスクとあれば、イスラムの聖地である。今日も遠くからのやってきた巡礼者の列がつづいていた。
モスクの正面の切妻破風には、金地に森や果樹園の壮麗なモザイクが施されている。アーチのリズミカルな広がり。ドームの四隅に、尖塔が晴れやかに聳え立つ。総本山の厳かな雰囲気が、旅人をしてひざまずかせる。中はなんと広い礼拝堂なのだろう。100㍍はありそうだ。絨毯が敷き詰められて、そこで礼拝している。寝転んでもいい。絨毯の花柄模様は楽園を表す。振興は天国への道でもある。
モスクの隣、スークの迷路をさ迷ううちに、いつしかアラブの世界に引き込まれる。アーケードを歩けば、食堂があり、鍛冶屋があり、ナッツや香辛料を山と積んだ店がある。
裏通りに折れ曲がったところに、コーラン時計の店があった。どんな時計だろう。ゴールドを扱う店がひしめいて、妖しげな光を放つ。マクハ(アラブ風喫茶店)では、客がのんびり時を過ごす。箒を売る雑貨屋などとても親しみを感じる。シャーマルハ(羊肉を薄く重ねてゆっくりと焙る)を、くるくる回転させながら切り取っている。あっ、面白そうと、買いもしないのに、逆円錐形の肉の固まりを指差し、あーだこーだと質問する。
中東紀行 ダマスカス
【シャーマルハを売る店】
やっとこ大門をくぐりぬけて通りに出ると、早くも夕暮れの気配が漂っていた。ラッシュの只中で、バスや車が行き交う。その間を縫って、平気で道路を渡る人がいる。ごった返す街の熱気が、街に満ちていく。
ホテルのスカイラウンジで、ダマスカスの夜景を眺めていた。街の明かりが、星屑のようにまたたいている。そんな中で、モスクがひときわ明るい。街の明かりの下で、どんな暮らしが営まれているのだろうか。

PS 今、隣国レバノン情勢の激しい中、ダマスカスに緊張が走っているとニュースは伝える。平和に見えた夜景は、光を失って、恐怖の暗闇になっているのだろうか。

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